ガンダムビルドファイターズの先行作品

ガンダムビルドファイターズの先行作品を考えてみる。

みんな、プラモ狂四郎だ! っていうけど、日本にはゲームをシミュレーターで戦うという漫画には、たくさんのバリエーションがあって、これらが、ガンダムビルドファイターズの先行といえるだろう。

つらつらと挙げてみよう!


「デュエルファイター刃」
●1993年 MTG発売
●1995年 MTG日本版発売
●1997年 「デュエルファイター刃」連載開始
MTGの発売元はTRPGメーカーである。パソコンや家庭用ゲーム機などのRPGが、コンピュータを相手にTRPGを一人でもプレイする事が出来るようにしたものだとすれば、TCGは、カードを使いTRPGの戦いを対戦として特化させたものである。したがってトレーディングカードゲームはコンピュータゲームの親戚なのだ。このまんがはマジック・ザ・ギャザリングを題材にし、RPGマガジン85号(1997年5月号)から連載開始し2003年完結した。専門誌での連載とあってチュートリアルなゲーム解説を交えての展開。ウィキペディアなどでは「トレーディングカードゲーム漫画の先駆的存在」と評価されている作品。確かにカードのゲームキャラクターを可視化してゲームプレイを見せる演出は、後の遊戯王ヴァンガードなど様々な漫画やアニメ作品に見られるものであるしゲームプレイをドラマティックに描くことを可能にしている。同じくマジック・ザ・ギャザリングを題材にしていた初期の「デュエル・マスターズ」では、デュエルの後になぜか負けた人が倒れていたりといった冷静に考えればおかしなシーンがあったり、プレイヤーのキャラクターを立てることでゲームを盛り上げようとする工夫などカードゲームの対決描写演出に苦労した痕跡が見られる。こうした演出も醍醐味の一つだ。ただカードのキャラクターを立てるという点では可視化が有効だろう。そうした面では若者だけが入り込むことのできる”プレインズウォーカー”というギミックは画期的なものであったといえる。ヴァンガードのコミックでは特に複雑なギミックがなくてもカードのゲームキャラクターがコマに描かれプレイヤーとの一体感が感じられる。しかし、こうした手法は、むしろ玩具バトル漫画のフォーマットとして、それ以前にも似た方向性は多く見られた。それはバトルシュミレーション。まずは、「プラモ狂四郎」のプラモシュミレーション。基本的には、これがホビー漫画のバトルシュミレーションものの基礎アイデアとなった。

よく語り草になるのだが作ったのはプラモ屋のおやじ。ファミコン発売前にこうしたアイデアを漫画化しているのはすごいと思う。このシュミレーションは最初はコンピュータにデータを入力していたのが、途中から精神エネルギーでプラモをコントロールするバイオチップが登場したり、一言では説明しづらい進化をたどるので興味のある人は実際に読んでみてくださいな。

こうしたギミックが導入された理由は推測するに、勝敗になじみにくいプラモ作成を対決させるフォーマットが必要だったのだろう。このギミックはよほど便利なものだったのか、多くの漫画で同様のシュミレーションマシーンが登場するのである。いや、正確にはプラモデルで対決できればいいので、SF的なギミックでなくても構わないのであるのだが。そうした例として、プラモ狂四郎と同じ作者の「超戦士ガンダム野郎」ではシミュレーターも登場するが、

回によっては超自然的な異空間で戦う、もちろんプラモで。

「コンバット弾」はコンバットシミュレーションの世界で戦う。チョロQで。しかも終盤は、コンバットシミュレーションを改造したタイムマシーンで未来に向かったりとすごい展開に。

先に紹介した「超戦士ガンダム野郎」ではSDガンダムを使ったバトルが繰り広げられるのだが、そのカウンター商品ともいうべきタカラの魔神英雄伝ワタル2の魔神プラクションを使用したバトルが繰り広げられる、「魔神英雄伝ワタル2 魔神開発大決戦」(青木たかお)がある。劇中、原宿にオープンしたワタルショップには魔神バトルシミュレーションが設置されているのである。ここで全国から集まったワタルファンの少年たちが改造した魔神で戦うのだ。青木たかおベイブレードのコミカライズで知られるが、こうしたシミュレーション作品を何作か手掛けている。
(魔神バトルシミュレーション)

ゾイドシミュレーションバトル/「特攻!!ゾイド少年隊」)

そして時代は00年代に下るが、同じくゾイドを使ったシミュレーションでは、「ゾイドバトラー雷牙」や「鉄魂!」がある。


さらにガンプラではGガンダムのプラモなどで戦う「ガンプラウォーズ」もある。


プラモ狂四郎」ではプラモをコマにしてディオラマの上で遊ぶシミュレーションゲーマーとも戦う回があり、そうしたゲームなども、プラモシミュレーションの発想の元になっているだろうし、ラジコン作品の影響もあるだろう。こうしたシュミレーションには、チュートリアルの側面があり、視覚化されたホビーの戦いの描写を通してプラモ作成のテクニックを紹介したり新商品のPRを行うのである。同様に戦いを視覚化した作品には「バーコードファイター」という先行作品がある。作者はおのとしひろ名義でポケモンのコミカライズを手掛けたり、別名義でかなりマニアックな成人向漫画を手掛けていることで知られる。「バーコードファイター」の元となったゲームは、機器で市販製品などのバーコードを読み取らせパラメーターを設定し戦うというもの(この作品はオタク的にも先行的な作品でコロコロで女装美少年をヒロインとして登場させたり、乗り鉄やら仏像マニアのキャラクターが登場して、作者である小野敏洋のオタク的素養の深さが感じられる)。漫画作品では戦いのディテールアップが図られている。これはドット絵であるファミコンのバトルをディテールアップさせていたゲーム漫画にも通じる。斯様にホビーやゲームのバトルをのディテールを描く事で迫力を出し漫画ならではの付加価値を提供していたゲーム・ホビー漫画の方法論を、「デュエルファイター刃」でも引き継いでトレーディングカードゲームでも開花させたのだといえよう。「トレーディングカードゲーム漫画の先駆的存在」かもしれないが、過去の漫画の資産を上手く使いこなしていたのだと思う。そして「遊戯王」TCG(アニメ版ではシミュレーションの変形ともいうべき拡張現実を使っていたり)の爆発的なヒットを経てカードゲームへの参入が一気に活性化し、トレーディングカードゲームの漫画も多くなってくるのである。その中の「カードファイター ブイマスター」(講談社)ではヴァーチャルスタジアムというギミックで対戦を行う。また「バトルスピリッツ

少年突破バシン」(講談社藤異秀明)はデビチルのコミカライズなどを手掛けた作者だが、カードに秘められた魔力がシミュレーションと同様の視覚化の役割を担っているという点で面白いと思った。

「モンコレキッズ」などのように、ただ普通に対戦描写で進める作品も多い。それで驚いたのは最近の作品だが「ヴァンガード」コミカライズの第一話。ただ対戦者同士がイメージするだけで、プレイヤーやモンスターが現前に現れるのである。これが一番正しいゲームの遊び方なのかもしれないなと思わせる一コマである。


こんな感じかなあ?