「のび太のドラビアンナイト」は原作者のどろどろしたものを感じる。

ドラえもん のび太ドラビアンナイト」は原作者のどろどろしたものを感じる。

映画ドラえもん のび太のドラビアンナイト [DVD]

映画ドラえもん のび太のドラビアンナイト [DVD]

1991年公開なので、もう20年近く前のアニメ映画。

見た感想を言うと、正直、他のドラえもん映画に比べて、設定の完成度が高いとは思えない部分はあるんです。
例えば何故絵本の世界と現実の過去とがつながっているのか、良くわからない。
実在の人物が登場すると現実とつながるという理屈なら、「絵本入りこみぐつ」で実在の人物が登場する絵本の内容を改変すれば、現実にどんな影響があるのだろうか、現実の人物を基礎にした絵本も多くあるしなあ、などなど疑問が多くの浮んでくる。
あとは、シンドバッドの正体。彼の魔法の道具が実は、××××××××からの贈り物だという設定は、ちょっと安易過ぎて、興奮しづらいかも。

とはいえ、非常に楽しい映画で、過去のアラブ世界での、のび太一行の冒険にはハラハラさせられる。今回は、ドラえもんのポケットが使えないという制約があります。唯一残った秘密道具で砂漠を渡る場面は、非常にドキドキ。
ポケットが戻ってくる理由は、ちょっとご都合主義的な部分は感じるのですが、ミクジンの役割を考えると、自然な感じでした。なによりミクジンのキャラは素晴らしい。

そして、のび太としずかの絆を描いた部分がいい。この二人が将来結婚することを知っているわけですが、しずかを助けるため奮戦するのび太の心意気に非常に感動。

で、二人の結びつきを象徴するかのように、奴隷商人に囚われたしずかの夢を見るのび太なんですが、そう、今回のしずかちゃんは、過去の世界で奴隷として扱われているわけですね。

最初は、のび太の夢の中で、他の奴隷とともに船上に囚われたしずかちゃんが登場します。
次に登場するときには、奴隷商人に連れられているしずかちゃん。
奴隷商人は他の奴隷を失って、唯一残ったしずかちゃんを金にしようと砂漠を渡ります。

で、しずかちゃんは、水浴びを利用して、何とか逃れようとするのです。
このオアシスでの水浴びシーンは、非常に綺麗なんです。直前のシーンではオアシスを見つけそこなってしまった、のび太一行との対比もあって、非常に水が気持ちよさそうで、その中で泳ぐいずかちゃんの裸体が妖艶。
これは自分の勝手な思い込みかもしれませんが、描き手もチカラが入っているように思われ、泉から地上に歩いてくるシーンのしずかちゃんの姿は、素晴らしい。

これで、性の目覚めを迎えたドラえもんファンって、多い気がします。それくらいのチカラがある場面。

で、水浴びの後、商人の目を盗んで、一人砂漠に歩き出し、逃亡するしずかちゃん。

問題なのは、ここからです。

この後のしずかちゃんに対する奴隷商人の振る舞いが、なんとも嗜虐心をくすぐるんです。
当然、商人は、しずかちゃんを追いかけるんですけど、逃げた奴隷にはムチの味を覚えさせるのだと、息巻くんですね。
足跡をみつけ、しずかちゃんを追い詰めるんですが、そのときのムチでの威嚇が妙にしつこい。
ムチの音で、しずかちゃんを脅しながら、ついに捕縛します。
それまでの、ムチによる威嚇がねちっこい、ホント。

ここで映画は場面転換し、のび太一行に切り替わるので、一体どんな拷問が加えられたのかは、一切画面に登場しないのですけど、次にしずかちゃんが、登場するときには、手は縛られ、肌にはうっすら、赤い傷が浮んでいます。
さすが静香ちゃんというべきか、心まで商人には屈服しないんですけど、この間なにがあったんだろうと色々想像させられます。

もちろん、この後は、シンドバッドの魔法の道具で助け出されるんですけど。

ただ、この一連のシーンを見ていて、作り手のサディスティックな欲望を感じるのは俺だけではないと思うんです。
しずかちゃんの追い込まれっぷりが、なんか尋常ではない。正直言って、怖い。ごめん、本当にもっと正直になると、怖いけど興奮した。迫力がありすぎて。
F先生には、色々な噂があるそうですが、この部分だけ観ると、噂が信じられそうになる。

とても、ドロドロしたものを感じてしまった。

と、子供向けアニメ見てナニ考えてんだ俺、という感じですが。