「げんしけん」オタク漫画紹介録第四回目に衝動的参加

夏のコミケから83日目。冬コミまで、あと55日。

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◆「げんしけん

現視研げんしけん)のOBとなら会った事がありますよ」


ある時、そう知人に言ったら怪訝な顔をされました。「こいつ漫画のキャラクターに会う妄想を抱くような奴だったのか!?」と思われてしまったようです。勿論この時に言った”現視研”とは、漫画作品の”げんしけん”ではなく某現代視覚文化研究会の事です。元々「げんしけん」の原作者である木尾士目氏が在籍していたサークルの名前が同漫画作品に登場するサークル名と同じ事もありモデルになったのだと言われています。

そのOBの方とはある飲み会でお会いしたのですが、二次会も終わろうとしていた頃に彼は「時間があるならガンダム台詞限定でシリトリをしよう!」と言い始めたのでした。自分は流石に付いていけませんでしたけど、参加した人達がちゃんとシリトリを成立させていて凄いと思いました。後に、げんしけん第三巻*1を読んで、ああ!きっと木尾士目ガンダムしりとりを実際にしていたに違いない!と思ったものです。

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さて、はてなキーワードによれば、幾つか実在する”現視研”を挙げていますが、この他にも幾つか”現視研”は存在しますし、ある高校のサークルで現代視覚文化同好会という名前のサークルも存在していました。コミケのカタログをさかのぼって調べれば、他にも見つかるかもしれません。こうしたサークルが幾つかあると言うことは、設立時に現代視覚文化という言葉が流行った時期があったのか、単純にアニメ研究会や漫画研究会では物足りず、この言葉を付けようという運動があったのかもしれません。正確なところは自分にはうかがい知れませんが。

なお、げんしけんの舞台である椎応大学のモデルになった中央大学には現代視覚文化研究班というサークルがありましたが、これは漫画作品に影響されて作られたサークルだという事です。他のサークルが母体になっているのかも知れません。また学校のサークルだけではなく、ゲームラボ特別編集 現代視覚文化研究*2なんていうムックもありましたが。

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ところで、漫画のタイトルになっている「げんしけん」については、ひらがな表記であるために最初何の事だか分からなかった人も多いのではないでしょうか?*3
でも、自分はこの「げんしけん」というタイトルは非常に優れたタイトルなのではないかと思います。
ご存知の通り、作品の中で「げんしけん」という名称が登場するのは第4巻*4で、コミフェス参加をする際のサークル名としてでした。
作中では春日部さんの一言で”現代視覚文化研究会”の略である”現視研”を、ひらがなにしたしただけなんですけれども、新たに”げんしけん”というサークル名を得たことが、笹原が従来の現視研の殻を破って、彼なりの出来る一歩を踏み出した事を象徴しているのだと思うのです。

色んな解釈がありえますが、げんしけんという作品は、笹原を中心に見れば、

序:笹原がサークルでオタクとしての居場所を見つける
破:笹原が部長となり従来の駄弁るだけのサークルから漸く何かを発信出来るまで成長
急:笹原が自分で発信した経験から将来への展望や人間関係を確立していく

という流れなのかなと思っています。

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同人誌を作れば発信なのかよ!?という意見もあるでしょうが、同人誌作成だけではなく、例えば原口との関係について、最初原口を嫌な奴だと思いながらも言われっぱなし。それが、原口がげんしけんの同人誌にかませろと迫ってくるにいたっては、

「つーか 童貞捨てる時くらい自分で決めたいじゃないですか!」
「俺らだけで作らせてくださいよ〜〜」

と反論!
地味ではありますが、これは原口と笹原の勝負です*5
そして台詞の字面だけで見れば情けないですが、あの場では、笹原の出来る最善の反論だったと思います。
結局、原口は手を引きます。実質的な勝利を導いたのは、笹原のこの台詞です。
自分でやりたい事をやるという気概を感じました。原口は、後日コミフェスの会場で嫌味は言うものの、ちゃんと同人誌を確認に来ている訳で、彼なりに気になっていたのでしょうか。自分はこのシーンが大好きで何度も読み返しています。
まさに男の戦い。燃える!!バーニングですよ!


以前、笹原は原口から以下のような事を言われていました*6
コミフェス会場で漫研に居座る原口のサークル参加についての台詞。

「まあアレか現視研にぁムリかそんな事」
「だって今現視研って何か活動してる?してないでしょ?」
(中略)
現視研に存在価値なんて無いんだよ」

悔しいでしょ?自分の居るサークルについて、こんな事を言われれば。笹原は、この時期オタクである自分を認めて現視研に居場所を確保し始めたばかりだったはずです。笹原はこの時点では、

「俺には現視研が合ってんだろーね」

と思うのでした。現視研という場所を見つけた事に満足していた時期です。何がしかの引け目を感じるオタクである自分を、さらけ出せるサークルを見つけた頃なのだと思います。
原口の意見に前面的に同意するわけではないし、オタクとしての居場所を見つける事の喜びは自分が言うまでも無いので笹原の気持ちにも共感できますが、この当時の笹原は、原口への反論の言葉を持っていないように感じます。

このシーンを思い出しながら、上記の笹原→原口反論シーンを読むと、心が熱くなります。
笹原は漸く自分の居場所の存在価値を主張出来るようになったのです。


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唐突ですが告白しますと「君に届け」の爽子ちゃんが可愛くて仕方ないのです。で、、、「君に届け*7という作品もクラスの中で誤解されて孤立している自分の居場所を作ろうと奮闘するヒロインを描いた作品だと思います。そういう意味では、げんしけんと通じるものが無いわけではないでしょう。
ただ、違っているのは、人間関係なら兎も角、クラスという単位そのものは自分の力ではどうしようもない、学校から与えられた場所であるのに対し(だからこそクラスで爽子は印象だけで差別されることになるし、クラスから逃げ出すことも出来ない)、げんしけんで描かれる大学のサークルは、自分の手で変えていけるし、逆に潰すことも出来るものだということでしょうか。

コミフェスへの参加、最初は部長になった笹原の口からでまかせだったのかも知れませんが、笹原は現状に不満な面もあったのだと思います。そうでなければ、コミフェス参加なんかしないですよ*8

それまでの現視研は、斑目が部長の時代までで言えば、確かに居心地も良さそうで楽しい場所ではあるのです。でも、言い方は悪いですが、ぬるま湯で真剣な活動の場としては機能していなかったと読めます。*9ある意味では、原口に上記の様に言われても仕方がなかったかも知れません。

笹原が部長になって、げんしけんが動き始める様に自分は快楽中枢を刺激されるのでした。



平凡な言い方しか出来ないのですが、げんしけんは、笹原の成長物語として読むと意外と熱い話なんだと思います。

何かまだまだ書き足りないし中途半端だけど、この辺で。

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評価。

・総合評価面:5
理由>好きだから。理屈何か書けないです。

・燃:5
理由>やっぱり春日部咲タバコ失火事件は名エピソードですヨ!(第三巻)オタグッズよ、燃えろ〜!燃えろ〜!
あと上記の様に笹原完士が熱いと思います。

・萌:5
北川さん。眼鏡。彼女になら、現視研を活動停止にされてもいいヨ!彼女になら水虫うつされてもいいよ!彼女の卒業で、俺にとっての、げんしけん、は終わりました。

あと、笹原恵子。ギャルなのが良い。でも黒ければもっと萌えた。木尾士目先生とアフタヌーン編集部は彼女を主人公にした連載を今すぐ始めるのが良いと想います。日焼けさせて。
関係ないのですが、先日秋葉原でこんな漫画を買いました。

お仕置き (BL COMICS)

お仕置き (BL COMICS)

黒ギャルが登場するので、紙面が黒っぽいよ!すげー。


・オタ:3
俺、オタクじゃないから、よくわかんないや!だから、中間点。

・パロ:5
エロゲーでオナニーする直前のシーンに「みなさん、さようなら!さようなら!」とゴジラの名場面っぽい台詞を持ってくるセンスが素晴しい。

・共:3
共感できる部分は共感できるんですが。
共感出来ないキャラや行動もあるので、3点にしました。

一人挙げれば、斑目なんかはヘタレで好きなキャラクターだけど、共感出来ない部分も多いのです。
例えば服を買い物するシーンでの台詞。

「自分の判断で決める これはいいものだと思ったら金を出す」
「俺はそうやって選んだ物に誇りを持っている なぜならそれは俺そのものだから!」

消費スタイルで自分を表現する、という考え方があるのは知っています。
でも、所詮既製品の中から選んだだけで、それを誇りだと言われても。
こうした面では、原口の斑目評は、まったくその通りだ!と思います。
コレでは春日部さんに弄ばれるのも無理はない。

斑目に感じるのと近い感覚では、直接は関係ないのですが、例えば同じ講談社の出版物メカビVol.1*10の巻頭の文章。(文:hidaka)

知識と技術のある人たちは創作物に想いを込めサークル参加する。物を作れない人たちも、それらを購入することで作品への想いを表現できる。


うそだ〜ぁ〜!同人誌をただ”買う”ことがサークル参加と同等の表現と言えるのですか?違うのでは!?
本当に作品への想いがあれば、技術も知識もなくても、感想でも雑感でも一行コメントでも、まずは情報を発信出来るよ!買ったという事実以外に何か発信しないと表現とは言えないと想う。
別に同人誌でなくても、ネットなどメディアや方法も沢山ある中であればすぐに出来ますよ〜。

・・・と、いきなり飛び火して、すいません。


・痛:2
この作品にそんなに痛さを感じないのきっと、自分が登場人物より痛い人だからです。

総合評価面:5 オタ:3 パロ:5 共:3 痛:2 萌:5 燃:5

というわけで、
業魔殿書庫・オタク漫画紹介録」第四回目に衝動的参加しました。

■ルール
・サイト、またはブログを持っていること
・お題となる漫画のレビューと評点を自サイトに記載
・このサイトの、お題を発表した記事のコメントにURLを記入
・募集期間は1週間〜2週間程度
・まとめ記事には、サイト名と評点、URLへのリンクを記載
・過去のレビューに評点を加えての参加もOK
・評点のみの参加はNG
・評点は整数で

締め切りが今日までなので、急いで書いたきゅー。あうー。

*1:

げんしけん(3) (アフタヌーンKC)

げんしけん(3) (アフタヌーンKC)

66ページに登場、こちらは只の「ガンダムしりとり」

*2:

ゲームラボ特別編集 現代視覚文化研究

ゲームラボ特別編集 現代視覚文化研究

*3:原子研?幻視見?減資圏?元氏兼?

*4:107ページ参照、

げんしけん(4) (アフタヌーンKC)

げんしけん(4) (アフタヌーンKC)

*5:参照68ページ

げんしけん(5) (アフタヌーンKC)

げんしけん(5) (アフタヌーンKC)

*6:参照132ページ

げんしけん(1) (アフタヌーンKC)

げんしけん(1) (アフタヌーンKC)

*7:人気作だから説明いらないよね?当然読んでますよね?

君に届け 4 (マーガレットコミックス)

君に届け 4 (マーガレットコミックス)

*8:第4巻105ページ

*9:もっとも、椎応大学漫画研究会の様に、真剣ではあるのでしょうが内部で女性同士の人間関係が悪化してギスギスしているようなサークルに比べれば、楽しいだけのものでも、よほどサークルの一員になりたい訳ですが。

*10:

メカビ Vol.01

メカビ Vol.01