「ビジネスパーソンへの推奨映画 プリキュアDX3にプロジェクト運

(某勉強会用に書いた原稿をもったいないから載せます)

 今回は映画「映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ虹色の花」(以下「DX3」)を取り上げようと思います。テレビで女児に大人気のシリーズの映画化です。そういえば娘さんが大好きで見ているとお気づきになった方もいるかもしれません。この映画では独立したテレビシリーズ8作(但しチームは6つ)の登場人物が一堂に会して活躍します。出自も個性も違う21人のメンバーが、普段の仲間とバラバラにされながらも、現場でチームを組みます。お互いの個性を生かし合って協力し敵に打ち勝ちます。全員が一丸となって目標を達成する様子が描かれます。こう言うと現場で活躍するビジネスパーソンである皆さんの中には「これは普段の組織ラインを離れて、組織横断プロジェクトに参加する場合に似ているのでは?」と思う方もいるかもしれません。そこで今回はプロジェクト運営のノウハウを「DX3」から学ぼうと思います。女児向けだからと侮らずゼロベースで観てみましょう。映画を意識的に見る事で様々なヒントが見つかるはずです。

(映画におけるヒント)
1.目標の共有
組織横断プロジェクトには文化も仕事の進め方も違う多種多様のメンバーが集まる事が多いと思います。そうしたメンバーの誰もが共有出来る目標を持つ事、それが最初の一歩でしょう。この映画のヒロインたちは敵の圧倒的な強さの前に絶望的状況で戦います。様々な世界をつなぐ虹色の花「プリズムフラワー」を守れなければ世界は無限の闇となり仲間の妖精たちとは二度と会えなくなってしまういます。それは絶対に許せない! それを阻止するという目標があるからこそ、多くのメンバーが、「あきらめない、絶対」と心を一つにする事が出来たのです。あなたのプロジェクトの「プリズムフラワー」はなんでしょうか?

2.プロジェクトの開始
普段の仲間とバラバラになり本来のチームとは違うメンバー同士が三つの即席のチームを組んで闘いますが勝手が違い最初はチームワークが全くありません。具体的な問題点として、
・意思疎通の欠如(普段のチームメイトとの阿吽の呼吸が新しいメンバーには通じない)
・実行能力の欠如(状況分析をするのみで敵に立ち向かうタイミングを逸してしまった)
・戦略の欠如(環境に流されてしまい自分たちのすべき事が意識されない)
が見られます。こうした問題点を解決するために普段のラインで仕事をしている時には気付かない自分たちの癖や惰性で動いている事はないか確認する必要があります。または自分が今までのラインでどのような役割を果たしていたか意識的に考えて見る機会が必要だと気づかせてくれます。

3.課題はどう解決されたか?
戦いが始まり不利な状況にプリキュア達は陥ります、しかし強みは何か? を考え、出自の違うメンバーが協力することで危機を乗り越えます。意思能力の欠如を「前進あるのみ」という行動力で乗り切ったのはリーダーたちのチームです。リーダーの素養である行動力で解決を乗り越えます。また実行能力の欠如は、メンバーの多様性で乗り切りました。多様性=ダイバーシティの重要さは言うまでもないのですが、カルロス・ゴーンは「日本メーカーはダイバーシティの点で苦労しています」「多様性がないということは、グローバル市場では弱点」(日経ビジネス2012.6.4インタビュー)と発言しています。具体例がキュアマリンの一言です、「海の上を歩けたらいいのに」というさりげない言葉に解決を促す力がありました。他のメンバーは理性的に考えることは得意ですが、マリンのように直観的な考えは不得意です。多様な考え方が危機で力を発揮しました。戦略の欠如は環境に適応することで乗り越えます。さすが年上お姉さんのムーンライトが落ち着いてゲームをクリアしていくのみと行動で示す姿や、敵のゲームのルールを利用して敵を粉砕するシャイニールミナスの行動が参考になるでしょう、彼女らの行動から協働、補完性について学ぶことが多いはずです。

4.新たな価値の創造と志の継承
プリキュアの活動は経済的な価値に換算出来るものではありません。ただ個々のメンバーの能力を超えた総和が生み出されている事に注目すべきです。チームプレイの強さ、すなわち彼女らの強さはパワーや格闘能力にあるのではなく、敵に打ち勝つための実行する組織能力の高さにあるということです。またライン型組織と比較したときプロジェクト型組織は継続性がないためノウハウや知見などが蓄積しづらいと言われる事が多いのですが、オールスターズとしては新米のスイートプリキュア♪の二人は先輩プリキュアの戦う姿を見て力をつけていきます。仕事を通じて学ぶOJT的な考えをそこに見ることが出来ます。

5.コミュニケーション(Communication)
少し横にそれるが劇中に登場するミラクルライトに注目してみよう。これは作中だけでなく来場した幼児に配布されるグッズだ。キャラクターのピンチの時に観客も一体となって応援する事が出来、来場者が映画に積極的に参加する仕掛けだ。本来配布される幼児に加えネットオークション等で入手した青年層ファンもこっそりと手にし振る姿が劇場で観られるなど、参加する楽しさを満たしてくれる。顧客との双方向コミュニケーションの具体例を見る事が出来るだろう。例えば4C分析におけるコミュニケーション(Communication)のケースとして考えてみるとよいだろう。
 この作品は、自らプロジェクトを動かす立場になった若いビジネスマンにこそ観てほしい。実際にチームを動かしプロジェクトを成功させるエッセンスを学べるだろう。また、この映画の元となったテレビシリーズは世界各国で放送されておりグローバル展開するビジネスシーンでは取引先との意外な会話の糸口になるかもしれない。もちろん、あなたの愛する娘との会話でも。