以下、揚げ足取り。

■ちょっと違うような気がしたので(ロボットテコンV
町山智浩氏がブログで今度実写化されるテコンVについて触れていました。

ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」より
”マシンだ!魔神だ!マジンガ……いや、テコンVだ!”*1
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20080201

『テコンV』は、韓国でまだ日本製文化の輸入が法律で禁じられていた76年に、世界的に大人気だった『マジンガーZ』の代用品として作られた韓国製アニメだ。

こんなアレなアニメでも、*2日本製アニメを観ることができなかった韓国のオタク第一世代にとっては忘れられない作品だそうで、去年、最新のCGを使って劇場用アニメが作られ*3、四十代の客が子どもを連れて行って大ヒットした。

どうも町山氏は70年代に韓国では日本製のアニメは全く視聴出来なかったと思っているように読めるのですが、実は韓国では1970年代には既に日本のアニメはかなり放送されていました。

キム・チョンギ監督自身もインタビューでテコンVを製作するに当たってマジンガーZを観て衝撃を受けたと証言しているし、マジンガーZが日本製であることを彼も知っていたようです。

韓国ではマジンガーZは1975年10月にMBCにて放送開始したそうで、当時の韓国は白黒放送だったみたいですが、かなりの人気だったそうです。それ以前にも70年には海底少年マリンが、71年にはリボンの騎士ジャングル大帝鉄腕アトムなどの手塚アニメも放送されていたようです。冬のソナタの脚本家が影響を受けたと話していたキャンディキャンディも77年に放送されていたそうで、多くの日本アニメが韓国のブラウン管に登場していたそうです。

もちろん、そうした作品が日本製であることは公には隠されていたのはご存知の通り。
韓国からの留学生に話を聞いたところ日本製かそうでないかの情報はソウルのような大都市と地方で地域差があったみたいで一口でいえませんし、少なくともソウルに住んでいた留学生の知人の周りでは知れ渡っていたという話もあります。このあたり、個人差が大きかったかもしれません。

なので少なくとも「代用品」という言い方は正確ではないと思うのです。
それに「日本製アニメを観ることができなかった韓国のオタク第一世代にとっては忘れられない作品」という評価も、違和感を感じます。

韓国アニメの研究家である菅原瑞生氏も指摘されていますが、むしろ白黒の小さな画面でしか見れなかったマジンガーZよりも、劇場の大画面でしかもカラーで観ることの出来たテコンVの方に当時の韓国の視聴者は強い衝撃を受けたのではないか、と思うのです。

昨年の劇場版は韓国で観て来ましたが、現在の目で見ても非常に劇場栄えする作品であったと思います。

そして、韓国のオタク第一世代にとってテコンVが忘れられない作品となったのは、上記のようにリアルタイムで非常に衝撃的であったことに加え、テコンV以降の韓国アニメで、テコンVと同じくらい衝撃を与えた韓国製アニメが他になかったこともあると思うのです。他に有名な韓国アニメ作品があまりにも少ないんですよね(というかここ数十年皆無に近い状態が続いてきた)。

キム・チョンギ監督の作品が80年代には、なんとも微妙な作品ばかりになったのは、スポンサーの問題もあったそうです。テコンVも後半は、グダグダな出来栄えになって行きます。よくネタにされるアッガイが宇宙で襲ってくるのは80年代のスーパーテコンVですが、韓国のテコンVファンにとっても、この時代の作品の評価は高くありません(ぶっちゃけ低いみたいです)。

それに、韓国のアニメファンは幼少〜思春期に強い影響を受けたアニメ作品が日本製であることにはセンシティブな感情を持っていたそうです。
例えば銀河鉄道999は韓国でも80年代に放送されていたのですが登場人物であるメーテルに女性を感じたというファンもいたそうです。
でも、そんな影響を受けたとしても、これは高校生(80年代)のとき漫研にいたという韓国からの留学生に聞いた話なんですが、学校で日本アニメを堂々と話せる雰囲気はそんなになかったそうで、一時期までの韓国のオタク層が堂々と話せたのはもしかしてテコンVくらいなのか?とも推測できます。これが、最近になると日本製アニメであっても堂々とファン活動をする人が多くなっているようなので世代差があるのでしょうけれども。

ちゃんと語ることの出来たクオリティーの韓国アニメがテコンV、しかも初期のもの(70年代)だけという状況が、長いことあったため、テコンVは韓国のアニメでは、特殊な地位になったのだと思うのです。

ところで話は変わりますが、よくテコンVのオリジナリティー要素として、巨大ロボットと格闘技の組み合わせであるとか、アンドロイドのメリやカープ博士など敵側の描写が画一的でなく人間味がある、という意見を目にします。前者は闘将ダイモスが78年とテコンVの方が早いと思うのですが、敵側の人間味については手塚が既にテコンV以前に韓国に入り込んでいたし、もしかすると手塚治虫の影響があったのではないかと思っています。電光アトムなんて作品も出来たくらいだし。
また監督のキム・チョンギ氏については、韓国製三国志アニメやテコンV登場のロボットのデザインなどを観たところでは、横山光輝の影響があったのではないかと推測しているのですが、どうなんでしょうか。

町山氏は、古くはマイアニメやアニメディアでもライターをされていた方ですから、時代的にはもしかすると自分が書いたことなんかご存知かもしれませんが、以上、思い切って書いておきます。

参考:コリアニメhttp://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/3447/、「韓国道中ヲタくりゲェー」(日韓アニメ研究会)、萌絵姫の韓国アニメ連載記事、他
ローゼンメイデンのキャラ合成声が。
http://alice.biglobe.ne.jp/ap/syun?SH


■ニッポン縦断仰天フーゾク(浪花ともあれ、宙出版
これは面白い! 浪花ともあれ氏によるフーゾク体験マンガ。正直、絵は自分の好みとは70度程違うのです。しかし、興味を引かれた点が沢山あります。まずはガチな体験を描いていると言っているだけあって、コマの端々に妙な現実感・リアルさがあります。ベニヤ板の向こうから聴こえてくる政治談議だとか風邪薬を飲みながら相手をしてくれる女性だとか、ストリップ小屋の爺さん達の描写など、他にもこんな場所やこんな人ってきっと居るだろうなと感じる場面が読んでいると楽しい。また登場する女性描写のメリハリというか書き込みの強弱がガチ体験取材の様子を生々しく伝えてくれます。そんな描写も手伝って、身体を張って取材をしている作者には悪いんですが”外れ”のエピソードが非常に面白いのです。むしろ恐怖すら感じるくらいの生々しさなのがスゴイ。当たりの場合もそういった外れ経験がある分、より嬉しそうな雰囲気がいい。作者の趣味がデブ専と嗜好が偏っているのですが、だからと言ってそれだけに無駄に拘らず、ロリ系でも熟女でもニューハーフでも、イイ相手の時は自然に楽しんで取材しているのが読み取れて、読んでいるこっちまで楽しさが伝染して来ます。漫画として読み応えがあります。

ニッポン縦断仰天フーゾク

ニッポン縦断仰天フーゾク

・揚げ足取り。そして、感想。

現代視覚文化研究 2 (三才ムック VOL. 185)

現代視覚文化研究 2 (三才ムック VOL. 185)

ところで、現代視覚文化研究2のアニメスタジオ特集ですが、非常に面白い記事でした。
ムックとしては、記事の物量が多いので読んでいて楽しい嬉しい。


この本の話題とは少しずれますけど。
今回は、意外とマンガの記事が多いのですが、ちょうど10年頃前に発行されていたマンガ系のムックと比べると語られているのがリアルタイム作品が多いようです。戦争描写のは多少過去作品が多いですが。10年前のムックについては、当時の書き手がそれまで生きてきてトラウマになった漫画作品た性衝動を受けた漫画作品、気になった漫画と、20〜30年の過去の作品を振り返るようなものが多かった気がするのですけど。
リアルタイム(といってもここ5年くらい)でレベルの高い作品が多く供給され続けてしまった結果、過去に遡って探さなくても自分の趣味に合致する作品が幾らでも見つかるので、現行作品群だけでも自分の嗜好やテーマを語りつくせてしまうという幸せな状況にあるわけですけど。その分、書き手が過去に影響を受けた作品傾向が分かりづらいのは、少し物足りないです。また、現行作品で満足出来るために過去からの歴史的視点が減ってしまったのでは。書き手もリアルタイムでブログなどで活躍している人が多く読者層とより近い立ち位置にいると思う。かつて年代がある程度上の書き手や何故若いのにこんな昔のことを知っているの? という書き手による、昔こんな作品もあったんだぜ! お前ら知ってるか? と多少自慢げなニュアンスも含みつつ、現行作品を読んでいるだけでは辿り着けない作品の存在を紹介していたわけですが、そういうレビューは最近めっきり少なくなったなあ。これも萌えブームの影響なのでしょうか? 「萌え」で満足出来るなら現行作品の方がより洗練され新しく断続的に刺激を受け取ることが出来るわけで、現行作品で次々と供給される作品を読むほうが、より合理的というか快楽原則に忠実であろうと思います。そうすると過去の作品に目を向ける歴史的な視点は必要なくなるでしょうかね。

と言うと乱暴か。

あるいは、結果と原因が逆という説があるのも知っているのですが。
ある程度漫画が好きという人は過去の作品も読んでいるのも。
もちろん過去の作品がここ10年で非常に手に入りやすくなったので逆にある意味現行作品と同列になったのかも。


(以下感想)

一読して思ったのが、何だ! この物量作戦は!? という感想だったりします。
「このマンガもすごい!」の1ページ1ネタ特集であるとか。先に言及の50のアニメスタジオが一気に並ぶ「アニメスタジオ特集」であるとか付録の同人誌であるとか。他の特集も含めて、量より量な構成が素晴らしい!

特に「このマンガもすごい!」では”万人受けしない”が、”尖って”、”偏って”いる”個人的オススメ”のマンガを紹介するというコンセプトで、「補完計画」というページにて、他誌のマンガランキングや売り上げ動向をフォローして、同特集の位置を眺める事が出来ます。こういうフォローはありがたい。確かにネタとして、あるいは独自な視点は面白い。コミックヴァルキリーの編集長は、やっぱり触手好きなのか? そうなのか、やっぱり。関係ないですが、アンバランス×2、手に入らないですよ!新宿の新宿書店紀伊国屋書店で売り切れでした。次は池袋にでも行くかなあ。
ただ、元ネタは当然「このマンガがすごい」*4で、そのパロディだと思うんですけど、「このマンガがすごい」自体もかなり万人受けしない尖った個人的なオススメマンガが紹介されていると思うんですよね。
何が違うのかといえば、”はいてない”、”触手”、といったオタク寄り視点から解説出来る書き手を集めた編集者の志向くらいか。ターゲットはオタク層なのだから当然なのだろうが、逆に、”この劇画誌マンガがすごい!”で紹介されているマンガ作品は、何を今更!? というくらい有名な作品を取り上げているところが逆に当ムックの立ち位置が分かって興味深い。現代視覚文化研究2の感想を書いたブログでもちらほらと、ここで紹介された劇画誌マンガに興味が出たなどと散見されて、所謂アキバ系オタク(でいいのか?)には新鮮な作品紹介なのかもしれない、と思いました。

あと付録の同人誌も読み応えがあるんですが、10年後に読み返すといい具合に熟成してヤンデレブームを振り返るのに楽しいツールとなりそうです。*5ところで、今まで、かーずさんって誰? 個人なの? それとも集団なの? ライターさん? 何やってる人なの? という疑問は、妙に長くて詳しい編集後記と年表にてある程度解消されると思います! ところで、ジャンクの花園については、共演した小明さんに云々とだけ書かれていますが、ジャンクの花園に触れるなら、そして、まじめにカルチャーについて語るなら、DJ急行氏やセラチェン春山氏の事も触れるべきですよ! と思ったのは俺1人だけですか? そうですか。まったくDJ急行&セラチェン春山といえば*6、我らが誇る世界のサブカルチャー *7ですよ! って、現代視覚文化研究2の読者層にはここらへん被らないですか? そうですよか。全然関係ないんですが、アニメ会のページで「オタク力検定」などの記事を書いているお笑い芸人米粒写経サンキュータツオ氏に、何故かここ半年の間で、お笑いライブと関係なく、何度もすれ違う事があって、某駅でだとか! 某●●線でだとか! まあ、単なる偶然だとは思いますけれども。アニメ会は一ヵ月後にライブするそうですが。

(福)耳通信は、リテラシーの問題も含みつつ、短いけど重い。

あと、ちゆ12歳の解説マンガは、前回に引き続き素晴らしい。俺もマガジンを応援しますよ!
でも、
アニメスタジオ特集開始してイキナリ最初のマッドハウスの住所、間違ってねぇ(P16)?
次のページのシャフトと同じになっているのですよ。HPのURLも同じだし。単なる誤植だと思いますが。
でもI.GとXEBECの住所が一緒なのは間違いではないと思うんですけど。
あと、ゼクシズとフィールも一緒なのだそうですが。
以上、揚げ足取りですいませんネ

なお、京都アニメーション宇治市
・萌え?
どんな店なんだろ。
忍美 クノイチとアレ。ttp://girlook.com/shinobi/i/index.html

*1:小池一夫先生〜!

*2:「こんなアレなアニメでも」とおっしゃっていますが、町山氏はYouTube以外で通して視聴されたんですかね? デザインはモロにパクりですが映画の出来とは関係ない部分もありますし、”アレな”と言われると、確かに”アレ”なんですが、もし思い込みだけで書いているのだったらテコンV ファンとしては、全編通してみて欲しいとしか言いようがない。多分日本と同様にアメリカでもコリアタウンで入手可能だしDVDは輸入可能だし。

*3:なお去年公開されたのは初代テコンVのデジタルリマスター版でした。

*4:

このマンガがすごい!2008

このマンガがすごい!2008

*5:ここら辺と一緒に。

ヤンデレ大全 (INFOREST MOOK Animeted Angels MANIA)

ヤンデレ大全 (INFOREST MOOK Animeted Angels MANIA)

*6:http://subcul.tv/

*7:急行&セラチェン春山インタビューが掲載されている本。

世界のサブカルチャー (NT2X)

世界のサブカルチャー (NT2X)

何故か例の同人誌も掲載されていてビビったですヨ。