テコンV8月に劇場公開

テコンVが8月に日本で劇場公開されるそうです。

韓国ロボットアニメの原点「テコンV」が今夏 劇場公開決定
http://animeanime.jp/news/archives/2010/06/post_1234.html

それで、記事にテコンVが「韓国の商業アニメ創成期の」とあるが不正確では?

アニメージュオリジナルVol.6でも紹介されたように韓国初の劇場用長編アニメ「ホンギルドン」が1967年に公開されておりテコンVは、それから10年近く経った後の作品である。これを創世期の作品というには時期が開き過ぎていると思う。ホンギルドンの後にアニメ映画は何作品も公開されていて例えば「稲妻アトム」や「黄金鉄人」などが作られているが、テコンV公開前の数年間は韓国で劇場用アニメが作られていない時期がある。つまりホンギルドン公開後韓国の商業アニメのブームが起こり一旦沈静化したと見る事が出来て、テコンVは韓国では「商業アニメ創成期の」というより第二次ブームの作品と言うべきではないか。実際にテコンV以降、数多くの劇場用作品が作られている。特にロボットものが多いのは周知の通りであろう。

それで、この記事を引用して、テコンVについて書かれてある他のエントリーなどを読んで思うのは、もしアニメファンならフィルムで語れ!ということである。
例えばmixiニュース経由の日記が結構酷かった。

確かにテコンVの搭乗用機は、パイルダーを引き写しているが、テコンVの全体的なデザインはマジンガーZよりグレートマジンガーを意識している。一番の違いは胸の形状でマジンガーZが分割されているのに対し、グレートマジンガーとテコンVは一体である点。全体的な身体のラインもグレートマジンガーに近い。
また、三作目の水中特攻隊のテコンVについては、明らかに「UFOロボ グレンダイザー」を参考にしていて、あるカットのテコンVは、特に股間がグレンダイザーを引き写している。

実際のフィルムを見比べれば、単純にマジンガーZのパクリとはいえないはずなのだが。きちんと見比べた上で指摘をしている人は少なく、残念な気がする。

別作品のスーパーテコンVと今回公開されるテコンV一作目を混同している人も多いが、これもスーパーテコンVを観れば記事の画像と違うことに気付いてもよさそうだが。

戦闘シーンを見た限りでは、マジンガーZテコンVでは、かなり違うリズムで動いているように見える。これがマジンガXであればグレンダイザーを参照していると言っていいと思うが、テコンVは戦い方自体が全然違う。テコンVの動きは、機会があれば、実際に見てから評価するべきだと思う。

何故、多くの人がテコンVマジンガーZのパクリだと単純に言ってしまえるかといえば、そうした人たちが、そもそも、きちんと日本のロボットアニメを観ていないからだと思う。

またテコンVがコン・バトラーVのパクリだと言う人は、たった3ヶ月前に日本でTV放送された番組のパクリを劇場映画として公開できるものと思っているのだろうか? あまりにもアニメを知らな過ぎると思う。

本気で、そんな短期間にアニメが作れると思っているのだろうか。制作プロセスや資金調達などを考えてみれば分かると思うのだが。

昨年も「スーパーハムズバンド」のOPが先行公開された際、これを「けいおん」のパクリだと発言していた人がいた。

たとえパクリでも、そんな短期間にアニメを企画・制作出来るとすれば、どれだけ凄いんだ韓国アニメ業界は?

時代は変わるが80年代にアニメブームが終了してしまったころ、アニメ雑誌などで紹介されたがTV放送出来なかった企画が多数あったことを思い出してみると、日本よりも、制作事情が悪かったはずの70年代の韓国で、たとえパクリだったとしても作品としてアニメ映画を世に問うことが、どれだけ大変なことなのだろうかと思わざるを得ない。OVA創世時期の「ダロス」や「メガゾーン23」、「バース」などはテレビ化出来ずOVAリリースされたが、OVA化すらされず消えていった作品が山とあるのはご存知の通りだろう。


テコンVを「パクリアニメの原点」と得意げに指摘している人がいるが、おそらく「パクリアニメの原点」は別にある。そう言う人は、例えばテコンVに先行する「クオステジョン」(1972年)などの日本TV作品のデザインを流用している作品についてもきちんと触れてパクリの経緯などを検証してはどうか? 調べもせず聞きかじりの知識だけでテコンVを「パクリの元祖」と書くのは、あまりにヌル過ぎると思う。

あとデザインについてだけでも、マジンガーZマジンガーシリーズ以外にも、テコンVのキャラデザインで参照されている有名作品があることを誰も言及していないが、これもきちんとテコンVを観れば、指摘出来るはず。していないのは、つまり一次情報がフィルムではないからだと思う。具体的な参照作品名は挙げないが、気になる人は実際に観て確かめて欲しい。

また、
これは個人的な感想だが、記事にもあるとおりテコンVには「暗い影を秘めた美少女アンドロイド」が登場し主人公フンと交流する。こうした人間とロボットの関係を描くプロットなどは、おそらく永井豪よりも、手塚治虫関係の作品の影響が強いのではないだろうか。アニメージュオリジナルVol.6の記事によれば、手塚治虫は韓国アニメ業界と交流があったという。

また、敵ロボットのデザインを見るに、永井豪ダイナミックプロよりは、横山光輝の影響を感じるのだが、どうだろうか。

可能なら、アニメに詳しい人が、ロボットテコンVを見て、
日本からの影響を”本気で”検証して欲しいと思う。