アジアの漫画表現規制例まとめ

◆アジアの漫画表現規制例をまとめてみる。

ある知人から「アジア各国の漫画事情を簡単にまとめた本ならこれを読むと良い」と紹介された本を読んでみました。
近所の本屋さんになくて、昨日行った立川、国立、でも見つからず、結局新宿に行って買ってきました。

「アジアMANGAサミット」

作者: 関口シュン,秋田孝宏 出版社: 子どもの未来社

アジアMANGAサミット (寺子屋新書)

アジアMANGAサミット (寺子屋新書)

まあ、少し古い本だし、見つかってよかった。

内容はアジアMANGAサミットのあゆみと、アジアなどでの漫画事情を簡潔にまとめてあり、とても面白いです。

なお、この本の主題であるアジアMANGAサミットですが現在では「国際マンガサミット」と称されており、昨年は台湾で開催、今年は韓国で開催予定なのですが、詳しくはこの本を読んでいただくか、検索してみて下さい。



ところで、漫画に対する表現規制は、普遍的な問題のようで、大会でも取り上げられているようです。それで、この本では地域ごとの規制について触れている箇所があります。

最近、非実在青少年の件など漫画の表現規制について話題になっているので、興味もあることから、各地域の表現規制例について、この本を元にメモがてらまとめてみようと思います。



●香港の漫画表現規制
香港には「わいせつおよび不良物品管理条例」があり、性的・暴力的な表現が出版規制され、陳列場所を区分する必要があるという。
1994年には、恋愛漫画スタイルでポルノ漫画を出版した出版社がいたことが契機となり政府が規制を検討するが、黄玉郎(龍虎門などで有名、映画化もされた)の呼びかけで表紙面積1/5の警告文を掲載する自主規制により乗り切ったとあります。ただし、これにより恋愛モノ作品は後退したということです。


●台湾の漫画表現規制
台湾には2004年12月制定の「出版品及録影節目帯文級別法」があり、漫画に限らず映画やビデオなどのメディアについて規制する法律があるそうです。
これにより性的・暴力的な表現が出版規制され、陳列場所を区分する必要があるということです。

〜1960年代台湾の漫画界は隆盛を誇ったが、1960年代には風紀紊乱の理由から政府の規制が始まり、漫画の審査制度が導入されたそうです。これにより倒産する出版社や引退する漫画家も現われるなど台湾漫画産業が壊滅寸前になってしまったそうです。
また2003年ころ、台北市では成人漫画の表紙に1/50以上の大きさのマークを表示させることを義務付ける規制が始まっていたそう。


●韓国の漫画表現規制
第2回アジアMANGAサミットは1997年にソウルで行われたそうだが、イ・ヒョンセの作品に対する表現規制が本人によって報告されたそうです。
イ・ヒョンセ(李賢世)といえば、映画化もされた「恐怖の外人球団」などで有名な韓国の漫画家ですが、韓国アニメ「アマゲドン」(1996年)の原作、監督もこの方でしたっけ。
「天国の神話」という上代の神話を描いた作品らしいのですが、神話の雰囲気を出すために登場人物をハダカで描いたり、神や人や獣の交わりを描いたところ、猥褻だと告発されたという経緯なのだそうです。
韓国での漫画規制は自主規制という形で1960年代から始まったそうです。
1961年に漫画家自身が原稿を事前に審査する「児童漫画自律会」という団体が作られ、また1968年には「韓国児童漫画倫理委員会」が作られ1990年代まで存続していたのだといいます。
これらの規制の背景には南北の政治的緊張や儒教キリスト教的倫理観が影響していたそうなのです。
こうした規制による事前審査により明朗快活なものだけが認められ、性表現はかなり手控えられ、児童漫画では特に厳しい。作家は「諧謔性」により、これに抗したそうですが。



この本では、他にもアメリカの自主規制コードなどに軽く触れていますが、多くの日本の漫画が流通しているアジアの地域で表現規制が実施されているということです。
こうした表現規制が、各地域の漫画にどういう影響を与えているかは、自分には荷が重いので書けませんが、上記の地域では日本の漫画が大量に流入しているそうですし(韓国では70%程度なのだそうです)、日本漫画が比較的強みを持つ遠因になっているのかもしれないと個人的には感じます。
歴史的に、もともと日本では性表現などについて緩やかだったそうですし。
少なくとも各国の漫画産業にとってプラスに働いているという記述はこの本では見当たりませんでした。

今後の日本で表現規制がどうなるのかはわかりませんが、影響を考えるために、こうした地域の例は、参考になるかもしれません。


もし要約や説明に間違いなどあれば、お知らせください。