東浩紀氏にはもう騙されないよ?

東浩紀氏にはもう騙されないよ?
先日(1/22火曜)東京工業大学講堂で行われた東京工業大学世界文明センター主催『思想地図』の創刊シンポジウム
「国家・暴力・ナショナリズム
に行ってまいりました。東浩紀氏の他に出席者は、北田暁大氏、白井稔氏、中島岳志氏、萱野稔人氏。しかし、開始が17:30だなんて、普通のサラリーマンには非常に厳しい時間ですよ!18:00過ぎに最寄の大岡山駅に到着して会場に入ると、東浩紀氏と北田暁大氏の最初の発表は終了し、白井稔氏が既に話し始めていました。それにしても、会場がほぼ満杯。気鋭の学者が登場するとあって、期待度も高いのかもしれません。内容は一言で言えば、今とは別の国家のあり方の模索(を少なくとも東氏は考えていたのだと思う)。そういえば、東氏のブログでは、

http://www.hirokiazuma.com/archives/000348.htmlより
平日開催だというのに、定員600名の超巨大なホールを押さえてしまいました。これで入場者が100人とかだと、ぼくの特任教授の地位もたいへんにあやしくなるので、みなさま、お誘いあわせのうえご来場ください。

と何か非常に弱気な事が書かれておりました。また、シンポジウムの前日に行われたイベント

永山薫presents
「2007-2008マンガ論争勃発」どうなる、どうするマンガ界?
商業誌・同人誌を取り巻く、マンガ文化の危機とは?表現規制著作権問題、海外進出、コンテンツ行政の今を徹底討論!2007年12月に発売された『2007-2008マンガ論争勃発』(マイクロマガジン社刊)の編著者と登場陣が提起する、新世紀マンガ論争。「性急に敵味方判定して罵倒し合う前に、やることがあるんじゃないのか?」「人の話を聞け!」今、熱い時間が動き始める!最新情報は、マイクロマガジン社サイトにて発信中。
http://www.microgroup.co.jp/mm/
【出演予定】市川孝一コミケット共同代表)、三崎尚人(同人誌研究家)、境真良(社会学者)、伊藤剛漫画評論家
【交渉中】東浩紀(哲学者)、白田秀彰(法学者)、金田淳子社会学者)ほか、『2007-2008マンガ論争勃発』登場陣【司会】永山薫漫画評論家)、昼間たかし(ジャーナリスト)

ロフトプラスワンでも、高熱のためか弱気にこのシンポジウムについて触れて「明日は騙されたと思って来てください」という発言があり、東氏がそこまで言うのだから、俺も一肌脱いで行ってみるかという気になったのに!

http://www.hirokiazuma.com/archives/000363.htmlより
300名超で成功というのがこちらの予想でしたが、蓋を開けてみれば600名以上が来場し、立ち見まで出る大盛況ぶり。単位修得用に入場した東工大生が数十人いたとはいえ、おそらくここ10数年の現代思想関係のシンポジウムでは、もっとも来場者を集めたものではないでしょうか。

本当に大人気ですよ! 全く。落ち着いてみれば、こんなに大人気なのは、広報や出演者の顔ぶれを考えれば最初から分かっていたのに。

ああ! 騙された! 弱気な口調でシンポジウムに、さも人が来ないような誘い文句を信じてしまった俺がバカなのです。バカ、バカ、バカ、バカーーーー!

まあ、そんな戯言は置いておいて、「マンガ論争勃発」と合わせて感想を書いてみます。両日出演したので東氏を枕にしてしまいましたが、東氏に対して特に何かを含むものではありませんよ!本当ですよ?東氏の場合は、計算でそう言っている感じがアリアリと分かるので、本当は腹など立つわけがないのです。

「国家・暴力・ナショナリズム」で印象に残った議論としては、
・国家とは暴力の正当性を独占するものである、
・方法としてのナショナリズム
・社会構成主義マルクス主義の崩壊により隆盛した、
・ルソーの一般意思に関する議論、
・国家の意思決定を行い得るメンバーシップの問題、
ピーター・シンガーアニマルライツについては知人が卒論のテーマにしていたので懐かしい)、
・国家への視点すらもサブカルチャーとなった現在、
といったモノです。

東氏の司会ぶりは、一部どうかな?例えば方法としてのナショナリズムにたいする反論→メンバーシップ問題をぶつけるタイミングが遅いのではないかやシンガーの話題は議論の中で浮いていなかったか? などと思う部分がありましたが(昨日の「2007-2008マンガ論争勃発」でも触れていましたが、体調不良をおしての司会だったのは、残念)、個人的には非常に刺激的な議論でした。

でも、最後の質疑応答の時間に「構造主義構成主義の違いを説明しないと分からない」と進行を無視して不規則発言し始めた人がいて(質疑は事前に専用用紙で回収されるというシステムのため、確かに出席者と聴衆との議論は出来ないだろう、しかし、個人的な疑問は個人的に後で出演者に聞くなり、家で調べればよいのではないかと思う)、それをやんわりと無視して進行する態度や、質問で「議論の内容がわかりづらい」(!w!w!)という意見に対し、「わかりづらい議論をしたいと思ってこういう場を設けたので分からない方はそれで結構、分からない方は思想地図を買わなくても良い」といった発言には、堂々とそういえる東氏が、正直、うらやましいし、妬ましい!! です。はい。


せっかくだから途中出演者の本を買おうと販売コーナーに向かう途中、どうも東工大の学生らしい人の会話が耳に入りました(東氏のブログでも単位取得のため数十人がシンポジウムに来ていたらしい)。面白すぎたので、つい聞き耳を立ててしまいましたよ。今の学生は大丈夫なのか? とオッサンくさいことを考えてしまった。
ただ、聞いたことを書くと彼らへの個人攻撃に捉えられかねないので内容は割愛します。

萱野稔人 氏の話に興味持ったので、以下メモ。

権力の読みかた―状況と理論

権力の読みかた―状況と理論

『国家とはなにか』

『国家とはなにか』

カネと暴力の系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)

カネと暴力の系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)

ところで、東浩紀氏について思ったのですが、オタク的な観点から見れば、彼は哲学界における前田登氏のような立ち位置なのではないでしょうか? 適度にオタクの現場に関わりつつ、自分のフィールドでオタク界隈について語るというところが共通しているのだと思います。でも、本当に思いつきなので、これ以上広がりませんが。

さて、『2007-2008マンガ論争勃発』イベントは、同名の書籍

2007-2008 マンガ論争勃発

2007-2008 マンガ論争勃発

を基にしたイベントです、読んでない人は読めばいいと思います。先行発売で買った自分としては、コミケ特典がほしいと思います。

イベント自体は三部構成。第一部では、永山氏と昼間氏のどう書籍のインタビュー裏話。第二部、第三部はゲストを招いてのトーク

なお、俺は適当な感想しか書かないので。*1

興味あったこと。
・長モノの定義は30cm以上。
・市川氏はコミック1の代表。
マイクロマガジン社キルタイムコミュニケーションは資本関係
って、何みんなが知っていうことを書いているんですか!と言われそうですが。


都産貿問題(メカビのレポート参照)
・東氏はお酒が入ってからが一番面白いのではないか*2
・境真良氏の話
・竹熊氏の評論本作成時の引用に関する話題
やおい描きは何を恐れているのか?
・●●氏と●●●氏の話なげーよ!!!!
・その場で行われた名刺交換が!飛び交う名刺の量が半端ない。
って、これじゃあ行った人にしかわからないですね。


ところで、イベント途中、東氏が父親としての視点から表現規制問題他について語り始めたのですが、別の出演者から10年前の東氏ならこんなことは言わない! と指摘されていました。では実際10年前に東氏と伊藤剛

(あ!唐沢俊一氏と飯塚昭三氏出演のイベントが今日プラスワンであることを今知りましたよ、今からでも行くかな・・・)

閑話休題

そして、
・他の出演者に発言を奪われた金田氏が途中から頷くだけに。


さて。
約10年前にロフトプラスワンで行われた「コミックマーケットから見えた現在」というイベントで東氏と伊藤氏がクイックジャパンの取材で行ったコミケで遭遇した出来事について語っていたのはトーキング★ロフト3世②で確認出来ます。
今回のイベントでも東氏は理論武装すべき! とたびたび発言していましたが、10年前の発言を読むと東氏はこの頃から理論武装が必要だ! といい続けているんですね(児童ポルノの問題にしろ著作権パロディの問題にしろ)。対して、このイベントでの市川氏の発言で(あえて自分の把握した範囲で書きますが)、同人誌即売会準備会の立場としては規制について自分から積極的に決めていかずのらりくらりとかわし続けるという【選択肢】もある→規制の定義は自分たちで作らない(大意)というものがあったのです。これは自らの首を絞めることは自分から言わないという世間知のようなものでしょうか。*3
市川氏の意見は、準備会的には非常に現実的な対応ではないかと思います。例えばコミケワンフェスの当日版権のような制度を用意したとしたら、著作権はクリアになるでしょうが、「場」としてのコミケがどうなっていたのか? は誰にも分かりません。まあ、ああいった意見だと反論も受けそうですけど。

あと三崎尚人氏の発言は、見ていた限りでは、東/市川の中間くらいかも。データや引用を元に事実について淡々と語る三崎氏の話も非常に興味深いものでした。

終盤の著作権関連の生臭い話も面白かったです。

多くの人が集まるなら、議論を深める方向に行くイベントが面白いのです。

(結局、唐沢俊一氏と飯塚昭三氏出演のイベントは今から行くの無理!泣く泣く、今日は諦めます・・・)


ごめんなさい、途中っぽいですが、終わります。

メモ:松浦大悟http://www.dai5.jp/  秋田選出の参院議員

秋田といえば、県議の大関衛氏は元気なのかな?

同人誌生活文化総合研究所http://www.st.rim.or.jp/~nmisaki/index.html

*1:興味がある人は、検索してレポートを探すか、次のページでも参考にしてください。

公式 http://ameblo.jp/mangaronsoh/
崩壊日記(出張所) http://d.hatena.ne.jp/azumi_s/20080122/1200932241 亡国データバンク http://d.hatena.ne.jp/boukoku_db/20080121/p1 フィギュア萌え族(仮)犯行説問題ブログ版・サブカル叩き報道を追う http://blog.goo.ne.jp/kotoba_mamoru/e/038b95a2d34785cad9fa2fadb75da1ef Stylish Private Note. http://d.hatena.ne.jp/sonoe/20080122/1200938308 @++ - あっとまーく・いんくりめんと -http://blog.livedoor.jp/increment/archives/51302349.html

*2:個人的にはオタクルネッサンスのときの酔っ払った東氏を見てファンになりました>http://www.hirokiazuma.com/archives/000241.htmlレポhttp://d.hatena.ne.jp/derorinman/20060916/1158334145 ただ、以下のようなこともあったそうなので飲んだ際にはご留意いただきたいものです。http://www.hirokiazuma.com/archives/000140.html

*3:ここでは、
東氏の積極的に理論武装して発信すべき!→市川氏(理論武装をするかどうかは別にして)積極的に自ら決めない
という、ある意味非常に面白い対比の軸があるような気がします。 立場の違いなんでしょうが(もちろん理論武装することと、準備会なりが立場を表明することや基準を作ることは、ちょっと位相が違うんですけど)、たとえ理論として正しくてもそれを組織の立場として表明するのは、可也のリスクを伴うでしょうし、「コミックマーケットから見えた現在」でも指摘されていた著作権の問題なんかも、結局コミケとしては言質を取られないよう、かわし続けてきたということなのか。