「わんぱく王子の大蛇退治」

技術的なところは、適当な事を書いていますが(指摘よろしくですッ)。


■「わんぱく王子の大蛇退治」(1963年春公開)

東映動画(現在の東映アニメーション)制作の長編劇場作品第6作目で初期東映長編アニメ群の傑作のひとつといわれています。
この作品には参加していないものの宮崎駿東映動画入社がこの年です。現在のスタジオジブリ作品は、当時の東映動画長編アニメの系譜につながります。

作品内容は、日本神話を元にしており、少年スサノオが母を求め様々な国を巡り冒険し、八岐大蛇を退治するまでが描かれています。各国の描写がバラエティーに富んでおり例えばツクヨミの国の静寂で無機質な背景美術はCGなどない時代の職人芸が堪能できます。また空中戦を初めて描いたアニメで、クライマックスの大蛇との戦いなどアクション面の盛り上がりも高いです。色んな国をまわり終盤にクライマックスを持ってくる作劇方法は、思えばフレッシュプリキュアの映画版と構成が似ていて、東映アニメーションにはずっと受け継がれているのかも知れません。
それにフルアニメーション制作で、キャラクターの芝居が非常に細やかです。なお日本アニメ史上初めて作画監督が導入された作品です。それまでは得意な場面を得意なアニメーターが作画するという作り方をしていたのを、映画としての統一感を出すために導入したようです。キャラは、それまでの東映動画作品に比べ非常に平面的・グラフィックデザイン的なキャラクターデザインで、独特の魅力があり、アートっぽくもあります。

現在の”アニメ”からすると、あまりに昔の作品すぎて、古さを感じるよりも、全く別のものに見えて、新鮮な感じがするのではないでしょうか。

というのも、
公開された1963年といえば、鉄腕アトムが放送開始した年となります。従って、アトム以降日本的リミテッドTVアニメのために培われることになる技術は当然使われていません。例えばあえて止め絵にすることによる心理描写効果なんて描写はありません。その後の日本アニメで多用されるカットバックやクローズアップ、トラックバック、トラックアップ、パンなども一部を除いて使われていません。擬似三次元的なセルワークもほとんど見られません。そうした、今日では”良く目にする”技法が無いぶん、画面から受ける印象はかなり違っていると思います。

その分目立つのは、やはりフルアニメーションにより描写されるキャラクターの生き生きした芝居だと思います。わかりやすい例でいえば、いわゆる口パクは殆どなく、会話シーンはその会話に相応しい全身の動きで表現されています。また大蛇の描写も動きにより存在感が描写されています。
当時の東映動画ではライブアクションと言う技法が使われていました。俳優に実際に演技をさせて撮影し、そのフィルムを参考にキャラクターの動きを描写していったといいます。「わんぱく王子」では、天岩戸の前で繰り広げられるダンスシーンなどで使われていたようです。

いろいろ書いてみましたが、現在見ているアニメの源流の一つですし機会があれば一度みて欲しいところです。