サザエさんについて語るのは大変そうだ。

結論から言えば、サザエさんについて語るのが難しいのは、十年一日の如く同内容(に見える)で放送し続けているからばかりではなく、語るためのフックがないからというのも大きな理由だと思う。

先日もイベントの感想を書いた某ロフトプラスワンのオタク系イベントだが、観客からの質問で「最近のサザエさんについてどう思うか」というものがあった。

出演者は例えば全自動卵剥き機のエピソードや雪室俊一脚本について、あるいはサザエさんがデジタル化される日は何時なのか、といった話題でこたえていたが、そのトークの面白さは別としても(あえて、この質問を選んだ、出演者や企画者のセンスは素晴らしいと思うし、観客として正直に言って、楽しかったですよ、お世辞抜きで)、やはりサザエさんについて語ることが大変なのではないか、と思ってしまった。デジタル化の話題については、数年前に語っても、このままデジタル化しなければ数年後に同じ話題で語ったとしても、最近のサザエさんの話題として通用してしまう気がするのである。


あまりにも変わり映えしないが故に、番組について真面目に語ることを拒むかのような、孤高の存在、正しい意味で「化け物番組」だと思う。

サザエさんは、普遍化〜あまりに日常の一コマとなってしまったアニメ番組なので存在自体が当然になりすぎた気がする〜し過ぎたあまり、今あえて語りなおす必要を感じる人も少ないだろう。これが例えば同じく普遍化していると思われるアニメ番組でクレヨンしんちゃんであるとかドラえもんアンパンマンであれば、映画化などのイベント性のある話題について話をするなど、容易だったのではなかったかとも思うのである。ちびまる子ちゃんのように実写化すれば〜まあサザエさんも既に実写化しているのだが時間がたちすぎているか〜それをフックにアニメを語りなおす事も可能なのではないかと思ったりもするのだが。

サザエさんには、そういったイベントもあまりない。

別に、オタク的な論点で語るだけでなく、例えば、学校や職場で昨日のサザエさんについて、月曜日に話をする人がどれだけいるのだろうか?
まあ、変なエピソードがたまにあるので、話題にならない訳ではないだろうが、日常会話の話題としては、少数派なのではないか。
大概の人は、日曜午後六時半にテレビの前にいればサザエさんを見てしまうが、何をおいてもサザエさんを毎週見なければと思う人がどれくらいいるのか、確認したい気がする。

だが、サザエさんは、少なくとも20世紀の日本文化を語る上で外せない存在なのは確実だろうし、過去語りつくされてきたような視点以外の論点も、遥か未来から見れば見つかるのだろうが、その頃の研究者は重要であるはずのサザエさんに関する記述や分析が、思ったよりも少ないことに驚くのではないか。あまりに普遍化しているが故に、語られない状況〜例えば今わざわざサザエさんを紹介しなおす必要もないくらいに皆サザエさんを知っているはずではないか〜が、あとどれくらいか分からないが、少なくとも十年くらいは今と同じような状況が続くのではないか。

今、自分は、決心した、少なくとも、俺は今週から、サザエさんを毎週録画して自分が見直すためにDVDで保存しておくことにする。

当然、日本中には熱心なサザエさんファンがいて、毎週録画している人も多かろうし、個人のレベルであれば保存している人も多いだろうし、意味がどれだけあるのか分からないが、これは保存しておく必要があるような気がしてきた。


今は、その必要性が なくとも、
十年後以降、現在的な議論としてサザエさんを語らねばならない日が来るかも知れない、そう思うのである。
それが、どんな話題になるのかは分からないが。


ところで、サザエさんほどではないが、ドン・チャック物語というアニメなんかも、以前はしつこいくらい再放送していて、しかも話数が100話近くあり、みんな知っているけど、今更、話のネタになることも少ないアニメかもしれない、とサザエさんのことを考えていて、思った。
ああ、数年前にAT-Xでの再放送を全て録画しておけば良かった。かつてビデオも発売されていたが、今から揃えるのは大変ですよ・・・。

■追記
あっ!
イベントといえば、サザエさんは、特別番組があるよ!
フジテレビのスペシャルな時期に。
それをネタにすれば、時期に寄ればネタになるかも。

オタク大賞R」〜おたくはつらいよ〜
2001年から始まった日本オタク大賞が装いも新たに新ステージへ!……いや、そんなに変わってませんから。今回のコンセプトはオタク版「ブロードキャスター」。激動のオタクシーンの最先端をホットにスピーディーにお伝えする、なんてことはなく、あくまでもゆるめに、冗談で、適当にやっていく不定期イベントです。なまあたたかく見守って下さい。
【出演】志田英邦、鶴岡法斎東海村原八
【司会】藤津亮太
【Guest】切通理作、他