ガンダムがSFかどうかだとか、そんなのガンダムで遊ぶには何の関係も

カネシゲタカシ 「1丁目のタイムカプセル 機動戦士ガンダムより」 (角川コミックス・エース 227-1)

70年代半ば始まったアニメブームだが、その一つの頂点ともいうべき作品が「機動戦士ガンダム」だったそうである。この時期のアニメブームは、それまでのターゲットである幼年層だけでなく、ヤングアダルト世代がブームを牽引したところに特徴があるという。それまでの観点から見れば、いい年をした若者がアニメをこれからの新しい文化だと盛り上がっていたわけである。

しかし、だからといって、それ以下の幼年層がガンダムで盛り上がっていなかったわけではない。

決して。


このマンガで面白いのは、当時のアニメブームの影で少し見えづらくなっているけれども、確実にいた低年齢のガンダムファンを中心にしたところだと思います。ガンダムブーム最盛期に小学四年生の主人公。ちなみに、自分は当時この主人公より少し上だった。
兄のようにガンプラを上手く作れるわけでもないし、やってることは、ガンダムの絵柄のメンコで遊んだりだとかジャブローに触発されて自分達の秘密基地を作り始めたりだとか、もう本当に子供の遊び! でもそれだ! それが楽しかったのだ! そして、そんな子供の遊びをきちんと描いたマンガがこんなに面白いなんて! まだアニメファンの好きなアニメと誰もに人気のあるアニメが分離する前の、ある意味幸福な時代。
人気のあるアニメなら子供が遊ぶモノも、いろいろ作られていたわけで、この単行本では扱われていないけれど、当時はガンダム消しゴムだとかガンダムシールだとか大量に出回っていたのですよ(そして俺の田舎では無版権らしきガンダムグッズが色々出回ってました)。人気のあるアニメなら皆で遊びたくなるでしょ。ちょっとお兄さんの世代が熱心に語っていたガンダムの設定のリアルさだとか、ましてやガンダムがSFかどうかだとか、そんなのガンダムで遊ぶには何の関係もないじゃん! ガンダムって、そういう知識抜きに見ていて楽しかったし、ガンダムで遊んで楽しかった。それにガンダムであることを差し引いても、映画を観るのが、どれだけ特別なイベントだったのか、電子ゲームひとつ手に入れるのが、どれだけ大事件だったか(そして俺は、電子っぽいゲーム、つまりパッケージだけ電子な装いのパチモンゲームを親が買って来て泣いた! このマンガの主人公のゲーム電卓なんていいほうだよ!)。児童の遊びに組み込まれた当時のガンダムを、このマンガで色々思い出します。もちろん、この後もずっと児童向けのガンダム玩具は続くわけですが。SDガンダムとか。あと、メンコについて少し書くと、舞台は大阪なのですが、微妙に自分の故郷とルールが違っていて、それも読んでいて楽しい。僕らの間では”ネズミ”は負けでしたよ? なんだか、読んでいて、わくわく。

だから、表紙のガンダムはどうみても当時のガンプラじゃないだろうとか、第一話の黒い三連星のザクが旧ザクMS-05じゃないとか、そういう細かなことは気にしないで!