京都アニメーションの人権啓発アニメ

自分は人権啓発アニメが好きだ。

そうなった理由はいくつかあるが、うち一つは以前同人誌にも書いた通り、ある作品がきっかけである。

それは、「おじいちゃんの花火」(1997年、企画:東京都教育委員会、製作:読売映画社、制作協力:井之上企画・京都アニメーション、監督・レイアウト・キャラクター・演出:木上益治)という作品である。

(このアニメのチラシ)
https://twitter.com/kanisanbiki/status/596261638673596416

障害者への理解や家柄、いじめといった問題をテーマにした作品である。ネットで知り合った東京に住む主人公の中学生を頼って、北海道から両親を亡くした事故のため足の不自由な少女が介護犬とともにやってくる。

彼女の両親は家柄が会わないとの理由で結婚を反対されたため疎遠になっていた祖父が隅田川で花火を打ち上げることを知り同居する祖母に書置きを残して家で同然に東京にやってきたのだ。

このアニメ作品は25分と短い作品ながら東京都教育委員会の企画ということもあってか、東京都内各地の風景が数多く登場する。

その背景美術が精緻で素晴らしい。

また画面構成も秀逸であり、レベルの高い背景美術とあいまって、印象深いシーンが続く作品だ。

たとえば実在の銀座の風景のなかで主人公と少女が銀座で出会う場面は名シーンだと思う。

強く作品世界に引き込まれた作品である。

主人公は、ヒロインを支えながら、様々な人権問題への関心を高め、いつしか友人の受けているいじめに向き合う強い心を獲得していく。


いじめ、家柄による差別、介助犬といった様々なテーマが、少年と少女を軸に作品上で消化されている。非常に完成度が高い作品。

先ほども述べた通り、ロケハンをしっかりと行っており見覚えのある東京都の町並みが何箇所も作中に登場する。舞台である東京都の情景が写実的に描写されている。

なお、鑑賞にあたっては、終了後のテロップにもあるように平成10年の製作であり作中での介助犬に対する描写は現在では改められている部分があることに注意。

また、えなりかずき前田愛(声優デビュー作「キノの旅」以前)、長門裕之といった有名キャストが声優として出演している。

この作品を見て同様の人権啓発アニメ作品にはどのようなものがあるのか観たいと思い調べ始めたのである。

京都アニメーションにはほかにも、「二匹の猫と元気な家族」(平成9年、カラー25分、プロデューサー:古田誠宏・井之上綾子、監督:石原立也・家喜俊彦、脚本:大津一瑯、コンテ・演出:石原立也、制作:高宮時夫、キャラクター・作画監督逢坂浩司、作画:木上益治、北ノ原孝将、笹井昌治、高橋博行、武本康弘、米田光良、逢坂浩司、製作協力:井之上企画・京都アニメーション)があり、「二匹の猫と元気な家族」は平成9年度人権啓発資料法務大臣表彰特別賞を受賞している。

(このアニメのパッケージ)
https://twitter.com/kanisanbiki/status/596262159148941312


さらに井之上企画制作の人権啓発アニメ作品を京都アニメーションは作っているが、「残された名刺―ある在日一世の軌跡―」(1997年、企画:大阪市外国人教育研究協議会・Women's CONCERN、制作:井之上企画)という作品もある。

機会があれば是非見て欲しいです。